第001話 ぱそさぽが出来るまで


00 このお話はフィクションです

 このお話はフィクションです。
 登場する団体、氏名、職業などは全て架空のものです。
 そこの所よろしくおねがいしますね〜。


01 ぱそさぽが出来るまで


「なぁ、えるあー、頼むよ〜お前クラスじゃないと意味がねーんだって…」
ぱそさぽ001話01 「嫌よ、何言ってるのよ、えるま!ふざけないでよ」
「ふざけてねーって、俺たちは大まじめだよ〜」
「【えるな】か【えるざ】に頼めば良いじゃない」
「あの二人に頼んだら俺、殺されちゃうよ〜」
「私なら良いって言うの?」
「うん、お前なら適任だ」
「嫌だったら」
「相手は俺じゃね〜って!めのるだからさ〜。お互い意識し合ってるんだから良いじゃんか〜」
「ななな、何を言ってるのかしら…わた、私は別に…」
「隠すことねーじゃん、バレバレだって、バレてないと思ってんの本人達だけだし…」
 笹川 えるあ(ささかわ えるあ)は従兄弟の米澤 えるま(よねざわ えるま)に頼み事をされている。
 従兄弟の【えるま】は三つ子で上に【えるな】と【えるざ】という姉がいる。
 母親同士が姉妹で【えるあ】はいとこ達と名前が似ているのだ。
 そのため、四つ子の兄弟姉妹と間違われた事も多かった。
 この三姉弟はえるあに厄介毎をよく持ってくる。
 今日もそうだった。
 【ぱそさぽ】、パーソナル・サポーターになってくれというものだった。

 順を追って話そう…
 えるあ達の通っている満萌州(まんもす)高校には様々な生徒が通っている。
 メイドや執事を侍らすような生徒も三人程、在籍している。
 生徒会長の宇佐見 晋太郎(うさみ しんたろう)もその一人だし、女生徒では倉持 愛華(くらもち あいか)もそうだった。
 この二人は何処からどう見ても紳士淑女で、生徒達にとても慕われていた。
 問題は、この二人ではなく、もう一人、石野橋 辰真(いしのはし たつま)とおきたのだった。

 辰真は晋太郎や愛華と比べると数段レベルの落ちる生徒だった。
 家柄や財力ではかるものではないが、あえてはかるなら辰真の家は晋太郎や愛華家よりグレードが何段階か落ちる。
 そこに劣等感を持っている辰真は晋太郎や愛華がメイドや執事を一人ずつ連れて来ていたのに対し、20人ものメイドを学校に連れて来ていた。
 親に甘やかされて育った彼は何でも一番ではないと気が済まない質だった。
 特に、晋太郎には勉強、スポーツ、家柄、顔…全て負けていると思っていて、何か一つでも勝ちたいと思って、親にねだって連れてきてもらっていたのだ。
 晋太郎は自分の生徒会の仕事を手伝ってもらう秘書の代わりとして、愛華はボディーガードの代わりとしてメイドや執事を連れてきているのに対し、辰真は単なる見栄で連れてきていた。

 だが、晋太郎や愛華に相手にされていないとわかると今度は他の生徒達に自慢を始めたのだ。
 そして、それは次第にエスカレートしていき、メイド達の胸をもみし抱き、わざと札束を落として拾わせるなど、悪趣味そのものだった。
 あまりにメイド達が不憫に思った、児玉 めのる(こだま めのる)と米澤 えるま(よねざわ えるま)の二人はイス代わりに辰真が座っていたメイド達を庇った。
 ここまでは格好いい事をしたと思ったのだが…

「余計な事してんじゃねーよ」
ぱそさぽ001話02 庇ったメイドからの信じられない一言だった。
「そうだバカ、金のないやつがしゃしゃり出てくるな!ねー、ご主人様ぁ♪」
「お金持ちのご主人様のためなら何でもするわ〜」
 辰真が辰真ならメイド達もメイド達だった。
 彼女達は金の亡者だった。
 金さえ貰えれば何でもする。
 金以外はクソだ。
 そんなタイプの人間達だった。

 助けに入ったのにこの仕打ち…
 めのる と えるまは腸が煮えくりかえった。
 悔しい…
 何て最低な奴らだ…
 と、めのるが思っていると突然、えるまが…
「何がメイドだ、メイドがなんぼのもんじゃ〜」
 と叫んだ。
 その言葉に対し…
「ふん、うらやましいくせに…」
 と辰真は吐き捨てた。

 すると、売り言葉に買い言葉でえるまは虚勢をはりだした。
「へ、へーんだ。メイドなんか嬉しくも何ともねーんだよ。こ、こっちはもっと良いのがついてんだからなぁ〜」
「へー、なんだよ、それは。メイドより良いものなんているのかね〜?」
「い、いるさ、なー、めのる…!」
「お、おう、そうだな!すげーのがいるぜ」
ぱそさぽ001話03 「だったら見せてもらおうじゃないか。何だよそれは?」
「い、今、休暇を与えてるから一週間後に見せてやるよ」
「面白い、忘れるなよ!嘘だったら裸で校庭一周してもらうからな」
「上等だ。居たらお前が一周しろよな」
「良いぜ。してやるよ。ところでその職業は何て職業なんだよ?言って見ろよ」
「なっ…そ、それは…」
「ぱ、【パソサポ】だよ。な、えるま」
「な、ナイス、めのる!そ、そうだ、【パソサポ】だよ、パソコン・サポートじゃなくて…」
「ぱ、パーソナル・サポーターの略だよ」
「そ、そうだよ、パーソナル・サポーターだよ」
「へー、面白そうだな…じゃあ一週間後、楽しみにしてるぜ」
「お、おう、とびっきりのを連れてきてやるよ」
 という様なやりとりがあったのだ。

 それを聞いたえるあは…
「バカみたい…」
「そうだろ、石野橋の奴バカだろ」
「あんた達もよ。そんなつまらない男に付き合うことないじゃない」
「だって、悔しいじゃねーか。バカにされて」
「そういう人達はお金で寂しさを紛らわせているのよ。相手にする事ないわ」
「なぁ〜頼むよ〜このままじゃ一週間後に俺たち裸で校庭一周することになっちゃうよ〜」
「はぁ〜…何でそんなバカな約束を…」
「後には引けなかったんだよ〜めのるだって裸で走るんだぞ。良いのかめのるが裸で校庭を走らされても」
「う、…それはちょっと嫌かも…」
「そうだろ〜。協力してくれよぉ〜」
「し、仕方ないわね…フリよ、フリだけだからね」
「もちろんだよ。恩にきるよ えるあ〜」
 ため息が出るえるあだった。


02 パーソナル・サポーターという職業


「それで、私は何をすれば良いの?」
 えるあ は えるまにたずねた。
「それなんだけどな、実は…」
 えるま は説明を開始した。
 それによると【パーソナル・サポーター】とは本来、支援を必要とする失業者に対して、本人の立場になって生活支援や就職活動の支援などを行う職業のようだ。
 えるま達が思っていたような職業では無かった。
 だが、【パソサポ】と言ってしまったからには後には引けない。
 このまま、押し通すしかなかった。

 そこで、めのるとえるまは【パソサポ】の仕事を新たに考える事にした。
 まず、メイドより良いと言ってしまった以上、メイドよりよく見えるような職業にするしかない…。
 そこで、二人は【パソサポ】は人生をかけてマスターに仕える職業と定義した。
 それだけでは弱いと思い、仕事内容を考えた。
 だが、色んな事を考えてみても思いつくのは既にある職業の特性ばかり…
 メイド以上のものとなると、どうしてもメイドを意識してしまい、正直、メイドと何処が違うの?というものばかりだった。
 二人だけでは良い考えが思いつかないので、誰かもう一人くらい同志となってくれる人をあたって見たが、なかなかいなかった。
 辰真の横暴を良く思っていない生徒はたくさんいるのだが、表立って事を構えた時の仕返しが怖くてなかなか協力的になってくれるような人間はいなかった。
 諦めかけた時、思いも寄らない人物が協力してくれる事になった。
 その人物の名前は倉持 愛華。
 財力で言えば辰真の実家の財力を遙かにしのぐ家柄の超お嬢様だった。
 彼女が言うには…
「面白そうですわ。私でよろしければ、喜んでアイディアの提供と資金援助をさせていただきますわ」
 との事だった。
 愛華は辰真のやり方を前々から好ましく思っていなかったのと、よく面白いことを始めたりするめのるとえるまのファンだと言った。
 お嬢様として育てられて来た彼女は周りの目があるため、常に正しく、清楚に、可憐に振る舞わなければならなかった。
 だが、本当はバカな事をやって周りに笑われるような事をやっているめのるやえるまを羨ましく思っていたのだ。
 自分も思いのままに、自由に行動をしたいと常々思っていた。
 そのための協力なら喜んでという事だった。
 それと、金持ちがみんな辰真の様に性格が悪いと思われたくないというのも気持ちの一つだった。
 そして、ここぞとばかりにめのるとえるまの話に参加してきた。
「特定の特性が思いつかないのでしたら全部やってしまったらどうですの?」
「っていうとどういう事だ?よくわからん。めのる解るか?」
「いや、俺も…お嬢、どういう意味?」
「そうですわね…例えて言うのでしたら【個人女優】かしら?」
ぱそさぽ001話04 「【個人女優】っていうと個人専用の女優って事か?」
「そう。時にはナース、時には恋人、時には家庭教師という様にそのシチュエーションによって役割を変えますの。これでしたら、かなりのスキルが必要になる職種になりますわ。」
「おぉ〜すげー、それだ、それにしよう」
「だけどよ〜誰がやるんだ?そんなスーパーレディー簡単に用意できるようなもんじゃ…」
「では、僭越ながら私が…」
「お嬢様、さすがにそれは…」
「駄目かしら…?」
「う〜ん、まぁ、さすがに、お嬢にやらせるわけには…」
「そうだな、お嬢の家の人が文句言うだろうし…」
「あら…残念ですわ…楽しそうだったのに…」
 愛華は自ら【パソサポ】になろうとしたが、横で黙って見ていた執事が止めに入り、めのるとえるまも納得した。
 愛華は渋々、バックアップ担当という事で納得した。
 では、誰に、【パソサポ】をやってもらうか…
 答えはあっさりと出た。
 えるまの従姉妹であり、愛華と校内人気ランクのトップを争っているえるあにお鉢が回ってきたのだ。
 愛華もえるあなら自分の代役として納得すると言っていたのだ。
 既に、デザイナーに【パソサポ】の制服のデザインを発注している。
 もちろん、いつの間に調べたのかえるあのスリーサイズでである。

 この話を飲むにあたって、えるあが出した条件は二つあった。
 一つは一ヶ月という期間限定であるという事。
 もう一つは一日交替で【パソサポ】をチェンジすると言うこと。
 例えば、月曜日にえるあが【パソサポ】となって【マスター】のめのるに仕えたら、翌日の火曜日はめのるが【パソサポ】となって【マスター】になったえるあに仕えるというものである。
 交代でやれば、負担も半分ですむからという理由だった。
 最初は反対しようと思っていたえるまだが、一日交替で主従関係が入れ替わる方が面白いかもしれないと思って了承した。
 こうして、即席職業、【パソサポ】の計画がスタートしたのである。


03 気になる二人


 翌日、【パソサポ】計画がスタートして初めてめのるとえるあは顔を合わせた。
「や、やぁ…笹川…お、おはよう…」
「お、おはよう、児玉君…い、良い天気ね…」
「そ、そうだな…い、良い天気かな…」
ぱそさぽ001話05 外は曇天、とても良い天気とは呼べなかった。
 ただでさえ意識しあっている二人が6日後には【パーソナル・サポーター】と【マスター】という関係になるのだ。
 緊張するなという方が無理だった。
 そんな緊張する二人にえるまが声をかける。
「よ、お二人さん。六日後、楽しみにしてるぜ。あぁ、そうだ、めのる、昨日、えるあと話して1日毎に【パソサポ】と【マスター】を交代する事になったから。お嬢には話通してるんで。お前もよろしくな〜」
「えっ、ちょ、ちょっと待て、えるま、俺聞いてない…」
「だから、今、話したじゃねーか」
「いや、それはそうなんだけど…」
「何でもフィフティーフィフティーでいかねーとな。えるあはそれで納得してくれた。な、えるあ」
「え、えぇまぁ…そ、そういう事に…」
「そ、そうなの…」
 気恥ずかしさが増すめのる。
 えるあも恥ずかしそうだった。
 えるまは用件だけ言うとさっさと行ってしまった。
 裏方として、他の生徒達への手回しとか色々あるのだ。
 取り残された二人お互いを見つめ合い、顔を真っ赤にしてうつむき合ってしまった。
 は、恥ずかしい…
 間が持たない…
 こんな状態で6日後、つとまるのか不安だった。

「いいい、行こうか…」
「そそそ、そうね…行きましょう…」
 行こうと言ってもただ、教室に入るだけなのだが、意識しあっている二人は必要以上にぎこちない態度でお互いに接していた。
 お互いがお互いを意識しているのは何となく解るのだが、あがってしまって何を話して良いか解らないという状態だった。
 意識すれば意識するほど、ぎこちなくなって行った。

「ちょっと児玉君、前、前!」
「あの、笹川さん、それ黒板消しですけど…」
 二人はいつものようにとんちんかんな行動をし始める。
 この二人が意識しあっているのはクラスでは有名で、意識しあうとこういう状態になるのは衆知の事実だった。
 それを面白くない表情で見ている視線が一つ…
 辰真だった。
 辰真はえるあにフラレていた。
 金に物を言わせた告白をして【最低…】の一言で玉砕していた。
 プライドの高い辰真はそれで20人のメイドを侍らせて己の自尊心を維持したのだ。
 こんな事で維持されるようなプライドなど大したプライドではないのだが、彼はそれで満足した。
 が、金に群がって来ているメイド達の質は高いとは言えず、どうしてもえるあと比べると見劣りしてしまっていた。
 そんなえるあと良い感じになっているめのるの事が辰真は妬ましかった。
 そんな気持ちもあったために、メイド達にめのるやえるまには口汚く罵るように指示をしていたのだ。
 そう、【パソサポ】騒動も元を正せば、辰真が、えるあにフラレた事から始まっていたのだ。
 えるあも全く無関係という訳では無かったのだ。
 えるあの思い人、めのるに恥をかかせたい…
 その気持ちが裸で走らせるというバツゲームを思いつかせたのだ。

 辰真はめのるに声をかけて来た。
ぱそさぽ001話06 「おい、児玉、【パソサポ】とやらの準備は出来ているんだろうな?【パソサポ】がいなかった時は解っているんだろうな。裸で校庭一周だからな」
 嫌らしい顔つきで言ってきた。
「い石野橋…」
「へっ、てめぇこそわかってんだろーな、居たらてめーが裸踊りだかんな」
「えるま…」
「裸踊りとは言ってないぞ…まぁいいか、どうせ居るわけないし…踊ってやるよ。もし居たらだけどな〜はっはっは」
「てめぇのほえ面が目に浮かぶぜ、わーはっはっは」
 えるまが割って入り、煽る。
「ちょっとえるま、やめてよ」
 えるあはえるまを止めに入る。
 この従兄弟は調子に乗るとどんどんエスカレートしていくのが解っているからだ。
「えるあ、お前も言ってやれ。前隠すなよってな〜」
「ま、前って…止めてよ恥ずかしい…」
「米澤ぁ〜笹川の従兄弟だからって調子に乗るな〜」
「俺はてめぇ何かと義理の従兄弟になるつもりはねぇぜ〜。なるのはこの児玉 めのるって決まってんだよ」
「ちょ、何言ってんだよ、えるま、笹川の気持ちだって」
「何言ってんだよ、めのる、えるあの気持ちは一つだぜ!」
「ちょっ、止めてったらえるま、えるなとえるざにお仕置きしてもらうわよ」
「おいおい、俺は味方だって、敵はこいつ、変態豚野郎だ」
「誰が、変態豚野郎だ。この石野橋 辰真様に向かって何て侮辱を。お前はケツの穴に鉄の棒を刺してやる」
「【パソサポ】が居なかったらやってやるよ。その代わり、居たらてめぇの股間に象を描いてやっからな〜」
「やって見ろ、じゃあ、お前にはランジェリーを着せて町の中を歩いてもらうからな」
「上等だ。ならてめーはボンデージで犬のように電柱におしっこしろ」
「だったらお前は…」
「もうやめて〜っ!!」
 えるあが止めに入った。
 放っておいたらどんどんとんでもない事を言い出しそうなので、止める事にしたのだ。
「あの…授業中なんだが…」
 後で、付け足したように担任の溝口先生の言葉が響き渡った。
 日を追う毎にどんどん取り返しのつかない状況になりそうだった。


04 【パソサポ】前日


 準備期間も一日、また一日と過ぎて行き、いよいよ、【パソサポ】計画の初日が明日という日になった時、めのる、えるま、えるあの三人は愛華に呼ばれ、彼女の家に招かれた。
 今日は日曜日。
 【パソサポ】計画は月曜日からという事になる。
「倉持さん。今日はお招きありがとうございます」
「笹川さん。お待ちしていましたわ。今回の計画は貴女が主役ですの。よろしくお願いしますわ」
「お嬢、今日はどうしたんだ?」
「はい、ついに完成いたしましたの。【パソサポ】の制服が。と言いましても手探りでの計画ですので、これから時と場合によって制服は変更していくつもりですけど」
「おー、ついに出来たか。どれどれ?」
「はい。まずは、最初のインパクトが大事という事でアイドルの衣装をモチーフにデザインしました。一応、この制服が基本スタイルとなりますが、今後のシチュエーション次第で、服を変えていきますの」
「ほー…なるほど…」
「可愛い…」
「ですが、シチュエーションを変える度にいちいち服を着替えるのは効率が悪いと考えていますので、今回は間に合いませんでしたが、ある特注品を研究していますの。いずれは実用化も考えていますのよ」
「なにそれ?、なにそれ?、興味ある」
「形状記憶合金はご存じですの?」
「あぁ、形を記憶しているっていう?」
「そうですの。特注品とはその形状記憶合金とナノマシンを応用したもので【ナノコスチューム】と言いますの。現在、特許出願中ですのよ」
「す、すげぇ…何か金かかってそうだな…」
「えぇ、開発費に300億程かかっていますの」
「ぶっ、…どっからそんな金」
 思わず、出された紅茶をえるまは噴き出した。
「えぇ、さすがに内だけでは少々、きついので宇佐見さんの所にもご協力いただいておきましたわ」
「え、生徒会長んとこも?」
「そうですの。快く引き受けていただきましたわ」
「やったな〜、そりゃあ、いい」
 盛り上がる愛華とえるま。
 その横で緊張がピークに達しているめのるとえるあだった。
 自分達の出任せが知らない内に大きくなってしまっていることに戸惑いを隠せなかったのだ。

「現在の段階では、3種類の服装を記憶できますの。目標としては100種類の服装を記憶出来るようにと考えていますのよ」
「おぉ〜すげー」
「100種類の服があれば、おおよその職種はカバー出来ると思いますの」
「そうだな。俺、なんか興奮してきたな〜」
「私もですのよ。制服だけでは無く他のサポートも考えていますのよ」
「へー、どんな」
「まだ、まとまっていませんので、今はお話出来る事は殆ど有りませんわ」
「そんなこと言わね〜でさ、何か一つくらい無いの?」
「そうですわね、では一つだけ。【サポートカー】も考えていますの」
「【サポートカー】?」
「たとえ【ナノコスチューム】が完成しても全てをサポートするのは事実上不可能ですわ。ですので、【パソサポ】をサポートする乗り物を開発してますの」
「ほー」
「例えば【女優モード】でしたら、演技に当たって必要な小道具などが必要な事もありますでしょ。【サポートカー】はそう言った小道具を積む乗り物でラジオコントロールカーの様に簡単な操作で動かすことができますの」
「すっげー!!メイドを超えてるよ、超えてる!」
「もちろん、メイドさんも【パソサポ】の中に組み込んでおきますわ。お好きなのでしょう、メイドさん?」
「はい、大好きです♪」
「正直でよろしいですわ」
 主役二人の緊張をよそに盛り上がる愛華とえるま。
 こうして、二人の高校生の出任せが大企業二つをも巻き込んだ一大プロジェクトと化していった。
 もちろん、えるあ用だけではなく、めのるの男性用の制服も用意されているが、やはり、花としてはえるあの女性用の制服だろう。
 それぞれが着る事になるであろう、制服を見ながらゴクッと生唾を飲み込む二人だった。


05 お披露目〜【パソサポ】デビュー


 当事者二人が眠れない夜を過ごしたが、翌朝の月曜日がとうとうやってきてしまった。
 泣いても笑っても【パソサポ】計画を始めるしかない…。
 やらなければ死ぬほど恥ずかしいバツゲームが待っているのだから。
 眠気覚ましのシャワーを浴びたえるあは下着姿でドライヤーで髪を乾かしながら、ハンガーにかかっている【パソサポ】のコスチュームをチラ見しながら…
「…よし、ここで引いたら女が廃る!いっちょ、やりますか!」
 覚悟を決めた。
 こういう時の女の子は男子よりも思いっきりが良い。
 なりきり【パソサポ】計画初日、おろしたての専用制服を着て登校した。
 アイドルの様な服装なので、最初はかなり恥ずかしかったが、次第に慣れて来て、逆に、人の視線が気持ちよく感じた。

 一方、極度の緊張で一睡も出来なかっためのるはようやくうとうとしかけていて、このままでは遅刻するという状態になっていたが…
「はぁい、めのる!えるまから聞いたわよ〜」
「面白い事始めるんだって〜?私達も混ぜなさいよ〜」
 美少女二人にたたき起こされていた。
 起こしに来たのはめのるの家の隣にすむ3つ子の上二人、えるまの姉の米澤 えるな と米澤 えるざだった。
 弟から【パソサポ】計画を聞き出し、面白い事が大好きな二人も計画に一枚かみたいとやってきたのだ。
ぱそさぽ001話07 「うわっ、えるなにえるざ、何でここに?」
「何でって、あんたを起こしに来たのよ!」
「私達もサービスしてあげるわ。嬉しいでしょ」
 にっこりと微笑む二人。
(うそだ、この二人、面白がって煽るつもりだ…)
 めのるはそう思った。
 米澤三姉弟は物事をエスカレートさせて行くのが上手いのだ。
 えるまに負けず、この二人も何か企んでいるに違いないのだ。
「さぁ、王子様、お着替えを手伝ってあげますわ」
 えるなが胸を押しつけてくる。
「違うわよ、えるな、【マスター】だって言ってたわよ、ねーマスター」
 えるざは腰を押しつけてきた。
 女の子に免疫の無いめのるの反応を見て楽しんでいるのだ。
「や、やめろ、二人ともっ」
「解ってるわよ、本命はえるあよね〜」
「えるあには内緒にしておいてあげるわよん」
「や、やめろってば、あ、パンツを返して…」
「はい、新しいパンツ。何があるかわからないからね〜。綺麗なパンツで行きましょう」
「何で、俺のパンツの場所を…」
「細かい事は言いからさ〜はい、おめかししましょ」
「早くしないと遅刻しちゃうぞ〜」
「ひ、一人で着替えられるから…」
「本当は着替えの時からお世話しないといけないんだけど、あの子、ビギナーだからさ、代わりに私達が来てあげたのよ」
「お前達だって素人じゃねぇか」
「細かい事言いっこなし。ほら、靴下」
「うわ、だから、一人でやれるって…」
「解ってないわね〜。【パソサポ】に黙ってサポートされるのが【マスター】の仕事なのよ、おわかり?」
 えるなとえるざは新しいオモチャを手に入れた様な気分でめのるに奉仕して見せた。
 えるあとは従姉妹同士という事もあり、基本的にめのる好みの顔の二人にサービスされてしまうと大事な所がつい立ってしまうのだ。
「あら、めのる何処抑えているの?」
「まぁ、朝だからねぇ、今日も健康ですってか?ねーめのる」
「頼むから出てってくれぇ〜」
 男子の裸は弟で見慣れている二人の美少女は恥ずかしがりもせず、めのるの裸を見ていた。
 ある意味、既に、バツゲームを受けているような気分になるのであった。
 そんなどたばた劇はあったが、めのるも【パソサポ】プロジェクトの初日を迎え、二人の美少女をお供に登校するのだった。

 校門の前では辰真はメイド達を従え仁王立ちをして待っていた。
 その場にはえるまが先に来ていた。
「お、【マスター】のご到着だぜ。はよーっス、めのる!昨日は良く眠れたか?」
「はよー、この目の隈、見たら解るだろ?全然、寝てねーよ。緊張して眠れなかった」
「安心しろよ、お前達のフォローは俺たちがしてやっから。お前は安心してサービスを受けて幸せ気分を味わえば良い」
「た、頼む、お前だけが頼りだ」
「何よー私達だっているでしょ?」
「姉ちゃん達、やっぱ朝、めのるんち行ったのか…」
「そ、そう言う事…何があったかは…」
「言うな…言わなくても大体、想像がつく」
「そうか、さすが、親友」
「おぉ、友よ!」
 がっちり抱き合う二人。
 男二人の茶番劇を見ていた辰真は
「気持ち悪いものを見せるな。男二人が抱き合う姿なんてこっちは見たくないんだよ。【パソサポ】だせ、【パソサポ】を」
「おいおい、慌てる乞食はもらいが少ないっていうぜ」
「誰が乞食だ。乞食はむしろ、お前達の方だろう」
「慌てんな、【パソサポ】は今、お嬢んとこで最終チェックの最中だ。慌てなくても、10分後にはてめぇのアホ面が拝めるって寸法よ」
「そんなことより、今、お前、お嬢と言わなかったか?まさか倉持が裏で手を引いて…」
「あぁ…知らなかったっけ?お嬢と生徒会長は【パソサポ】の大事なスポンサー様よ!恐れ言ったかこの野郎」
「な、き、聞いてないぞ、そんなこと…」
「今、言ってやったじゃねーか」
「だ、黙れ!」
「どうした?顔が青いぞぉ〜」
「う、うるさい…」
 えるまの言う通り、辰真は顔面蒼白だった。
 めのるとえるまだけなら大したことはない…
 どんなものがこようと適当なケチをつけて裸踊りをさせてやる…
 そのつもりでいた。
 だが、晋太郎と愛華の実家がスポンサーになっているとなると話は変わってくる。
 辰真のメイド達が霞むような人材を連れてきてもおかしくないからだ。
 辰真は何とか裸踊りを回避しようと思って、何とかこのピンチを乗り切る方法を頭の中で模索し始めた。

「お、来たみたいだぜ、紹介しよう、彼女がめのるの【パソサポ】、笹川 えるあだ」
「よよよ、よろしく、おおお、お願い…します」
 たどたどしい挨拶と共にえるあがめのるの前に現れた。
 昨日、制服を見てはいたが、えるあが着たのを見るとまた、別の感動があった。
「こぉこここ、こちらこそ、よよよぉろしくぅお願いしまったす…」
 めのるの方も言葉から緊張が見て取れた。

 一方、辰真はダブルショックを受けていた。
 一つは【パソサポ】は実在していたという事。
 もう一つは【パソサポ】がえるあだったという事でだ。
 涙目で…
「み、認めん、俺は認めんぞ。こんなの嘘だ。絶対に嘘だ。でっち上げだ。そうに決まっている」
 と言った。
 確かにでっち上げではあるが、それでも、金と工夫、少しではあるが時間をかけてやっている一大プロジェクトである。
 今更、こっちも引けない状況だった。
「往生際が悪い野郎だな、さっさと降参して脱ぎゃーいーんだよ、ぱーっといけ、ぱーっと」
「しょ、証拠を見せろ。やらせじゃ無ければ出来るはずだ」
「証拠って何すりゃ良いんだよ?」
「そ、そうだな…メイドより良いものなんだろ?だったらそれを証明してもらおうじゃないか」
 段々、雲行きが怪しくなって来た。
 心の準備もろくに整わない内に、めのるとえるあに試練が降りかかりそうな雰囲気だった。
「な、何させる気だよ…」
 めのる達の気持ちを察してか、強気だったえるまにも余裕が無くなってくる。
 形勢が逆転したのを感じ取ったのか、辰真はにやりと不敵な笑みを浮かべ…
「そうだなぁ…まずは軽く抱き合ってもらおうか…」
「な、何かと思えば、それくらい何でもねぇよ…な、なっ二人とも…」
 えるまはめのるとえるあの様子を伺う。
「は、はは、な、何だそんな事くらい…」
「そそそ、そうね…それくらい…」
 強がる言葉とは裏腹に、二人とも耳まで真っ赤にしていた。
「どうしたぁ?さっきまでの余裕顔はどうしたんだぁ?」
 勝ち誇ったかのような顔で辰真は聞いてきた。
 抱きつける訳がない…
 抱きつけるくらいなら、今まで、あんなに意識しあわないはずだ…
 そう思っているのだ。


06 試練?恥ずかしがる二人


「さぁ、どうしたんだ?抱き合ってみろよ」
 辰真は大声で叫ぶ。
「この野郎…」
 えるまは歯ぎしりした。
 これが自分だったら喜んで抱きつくのに…
 そう思っていたからだ。
 めのるとえるあは何とか近づこうとするのがやっとで、抱きつくという所までには至らない。
 このままではめのるとえるまの裸踊りが決定してしまう…。
 そう思っていた一同だが、この場にはえるなとえるざもいた。
「おぉーっと手が滑ったぁ〜」
「こっちも滑ったぁ〜」
 転んだフリをして、えるなはめのるの、えるざはえるあの背中をポンッと押した。
 二人は思わず、抱き合ってしまった。
「あわわ、ご、ごめ…」
「ああ、あの…」
 とっさに離れようとする二人をえるなとえるざは押しくらまんじゅうのようにして押し込んだ。
 がっちり抱き合う二人。
 お互い、頭から湯気が出ていそうな程、頬を真っ赤にしていた。
「ど、どうだぁ〜、見たか〜」
 えるまはしたり顔をした。
「どうだって、今、押したろ、どう見たって押したろ」
「目の錯覚よ。目の錯覚だと思う人手を挙げて」
「はーい」
 ギャラリーは一斉に手を挙げる。
 みんな、米澤姉妹に下手に逆らうと仕返しが怖いと思っているのだ。
「ほら、多数決で目の錯覚に決定」
「ふざけるな、こんな茶番、認められるか」
「男らしくないわね〜。男なら素直に負けを認めてパパッと脱いじゃいなさいよ」
「誰が認めるか。つ、次はな〜…」
「あの…一応、ここ、学校なんだけど…」
 騒ぎを聞きつけやってきた溝口先生がぽつりともらした…。
「じゃ、邪魔が入った。続きは放課後な。逃げるなよ」
「教師捕まえて邪魔って…」
「てめぇこそ、逃げるなよ。大事なとこ、洗って待ってろよ」
 溝口先生も居たので続きは授業が終わってからという事になった。
 ひとまず助かったと思うめのるとえるあだった。
「お〜熱いねぇ〜いつまで抱き合ってんのぉ〜」
「え?あぁ、ゴメン…」
「こ、こっちこそ。ゴメン…」
 慌てて離れる二人だった。
「良いところだったのに何邪魔してんのよ」
「わぁ〜ゴメンえるな姉ちゃん、ついからかってみたくなって…」
「悪い子には電気あんまの刑ね〜」
「痛ぇ、痛ぇ、えるざ姉ちゃん、お婿にいけなくなっちゃうって」
 めのるとえるあの抱擁の邪魔をしたえるまが姉二人にお仕置きを受けた。
「ヘルプ、ヘルプめのる〜」
 めのるに助けを求めるえるまだったが、めのるにそんな余裕は無かった。
「めのるさん、鼻血が出てますわよ」
「え?えぇあぁ…ありがとお嬢…」
 後から来た愛華がティッシュを差し出す。
 興奮のあまり、思わず、鼻から血液が出てきてしまったのだ。
 えるあは腰を抜かしてしまっていた。
 先の思いやられる二人だった。
「これは…始めはお二人にお任せするつもりでしたが、どうもそれでは…」
「さっすが、お嬢、話がわかるぅ〜」
「私達も協力するわ。よろしくね、お嬢」
「はい、よろしくお願いします。これからみんなで盛り上げていきましょう」
 愛華の財力に米澤姉妹の行動力が加わった。
 パワーアップする【パソサポ】スタッフだった。


07 これぞ【パソサポ】サービス


 放課後、石野橋家の豪邸に集まった【パソサポ】チーム。
 えるあは今では見られなくなったブルマ姿で現れた。
ぱそさぽ001話08 愛華のロールスロイスの中でえるなとえるざに無理矢理、着替えさせられたのだ。
「は、恥ずかしいよぉ〜…」
 恥ずかしさで逃げ出したい気持ちになる、えるあ。
 愛華は…
「メイドさんにこれが出来て?組んずほぐれつの一緒の準備運動よ」
 と言った。
 もちろん、これは、えるな、えるざ姉妹の入れ知恵である。
「おぉ…」
 一緒に来た野次馬…もとい、ギャラリー達は興奮する。
 嬉し恥ずかしの【マスター】めのるとの一緒の準備運動だった。
 身体と身体の密着が恥ずかしくてたまらなかった。
 めのるは嬉しくてたまらないのだが、人前でやるというのがNGだった。
「き、貴様ぁーっ!」
 辰真が思わず怒鳴る。
 まだ、えるあの事が気になっている彼にとってはムカつくことこの上なかったからだ。
「どうしたぁ?【パソサポ】サービスはまだまだ、これからだぜ!」
 えるまが形勢再逆転とばかりに強気に出る。
 これ以上何をさせる気だとえるあが批難の目をえるまに向ける。
 それを知ってか知らずか、親指をグッと立ててウインクして見せる。
 どうやら、一気にたたみかけるというサインの様だ。
 めのるはティッシュを鼻に詰め込んでいる。
 また、鼻血がぶり返したのだ。
 準備運動が終わるとえるあは車に連れ込まれ、次の着替えをさせられた。
 待っている間、愛華が…
「このお着替えの時間がまだまだ、改良の余地ありですわ。もっとスムーズに行きませんと。【マスター】をお待たせさせているということですものね…」
 とつぶやく。
 彼女はこの【パソサポ】プロジェクトに本気だというのが解った。
 遊びで終わらせるつもりは毛頭無い様だ。
 本気で300億もする【ナノ・コスチューム】の実用化を考えていた。

 そうこうしている内にえるあの着替えも終わった。
 出てきた格好はバニーガールのコスチュームとチャイナ服を混ぜたような姿だった。
ぱそさぽ001話09 「小腹も空いていますから、軽くお食事をしましょうか。今回は中華でいきましょう」
 愛華が合図すると執事が桃まんじゅうを運んできた。
「な、何をさせる気だ?」
 辰真が質問すると愛華はにっこりと
「では、えるあさん、そこにおすわりになって下さいませ。膝枕でめのるさんに食べさせてあげて下さいませ。顔を近づけながら…」
「えぇーっ…」
 驚いたのはえるあだ。
 顔から火が噴きそうだった。
「はーい、えるあはまだ、【パソサポ】新米なんで、私達がフォローに入りまーす」
「安心して私達に身を任せてね〜。優しくするから」
「□◎♪◇■▽」
 声にならない声で首をぶんぶん横に振るえるあ。
 めのるはもう片方の鼻の穴からも鼻血が噴き出してきた。
「やめろ、やめてくれぇ〜」
 悲鳴をあげはじめる辰真。
 好きな女の子のそんな姿など見たく無かった。
「なんだ、石野橋、もう根をあげたのか?」
「う、うるさい、きょ、今日の所はこれで、許してやる」
 どうやら、めのる達より先に辰真の方が根をあげた様だった。
「もう、降参ですの?諦めるのが早すぎますわ。まだ、これだけ項目が残っていますのに…」
 愛華が残念そうな顔をして、一枚の紙を出した。
 そこには、第三サービスとして水着でいちゃいちゃスキンシップ運動から第十七サービスお休みのキッスまで項目がずらーっと書かれていた。
 とてもじゃないが、今のえるあに全うできるような項目とは思えなかった。
 これを読んだ辰真は卒倒しそうになった。
 このまま強がって見ていたら、嫉妬に狂ってしまいそうだと思った。
「負けを認めるんだな?」
 えるまが確認を取る…
 辰真
「み、認めん、絶対に認めん…だ、だけど、きょ、今日は具合が悪いから続きは明日にする…」
「明日だぁ?こっちは暇じゃねーんだよ」
「一日だけじゃわからん。何日か様子を見て判断する…」
「えぇ〜っ」×2
 「えぇ〜っ」と言ったのはめのるとえるあの二人だった。
 今日のイベントは出来れば無かった事にして欲しいくらい恥ずかしかった。
 それが、後、何日も続くのかと思うと…気が気では無かった。
 それに、明日は主従が逆転する。
 明日はめのるが【パソサポ】として、【マスター】になる、えるあにサービスをしなくてはならないのだ。


08 主従逆転サービス


 翌日の火曜日、男性版【パソサポ】にめのるが…
 女性版【マスター】、【ミストレス】にえるあがなるという日を迎えた。
 学校に居る間は先生の目もあるから出来ないとして、放課後、【パソサポ】のサービスをする事になった。
 男性版【パソサポ】は【ミストレス】をエスコートするというのが主な役割となる。
 学校の休み時間や昼休みなどを利用してスタッフと打ち合わせをして、デートコースを研究した。
 女の子とデートなどしたこともないめのるのために【パソサポ】スタッフ総出で相談した。
 相談の結果、昨日の今日で、二人も疲れているという事、今回の辰真に見せつける【パソサポ】は男性版ではなく女性版【パソサポ】であるという事で軽く流して明日につなげるという事にした。
 それでも、辰真に羨ましいと思わせないといけないので、合間には軽いスキンシップ等を挟む事にした。
 例えば、土手で花火をするというイベントがあった時は土手で腕枕をする、映画を見に行く時、腰に手を回してエスコートして、映画館の中では肩に手を回す、車から降りる時、軽く手の甲にキスをする等が考えられた。
 だが、めのるのスキルではそれらは無理と判断、デート中はずっと指を絡めて手をつなぐという事にした。
 それでも、米澤三姉弟の手助け(?)もあり、辰真の嫉妬心をかき立てるには十分過ぎる程効果があった。
「おっと、足が滑った」
 と言ってはめのるを押してえるあのおでこにキスをするようにし向けたり…
「わっ!」
 と言って、夜道を歩く二人を脅かして、抱き合わせたりしたのだ。
 その度に辰真は癖になっている爪をかむしぐさをして悔しさを紛らわせていた。
 が、めのるがえるあをおんぶするというイベントあたりからおかしくなり始め、頬をぴったりと合わせてプリクラを撮るというイベントの時には…
「ふ、ふん、そんな女、俺にとってはもう、どうでも良いんだよ…」
 という虚勢と共に去っていった。
「おい、裸踊りは?」
 というえるまの声は完全に無視していた。
 約束など、これっぽっちも、守るつもりは無かったのだ。
 これで、辰真の株がまた一つ下がった。
 バツゲームという約束は守られる事は無かったが元々はめのるとえるまのハッタリから始まった事として、それ以上の追求はしないことにした。

「あ〜すっきりした。石野橋の奴の悔しがる姿もたっぷり拝めたし、これでお開きとしますか」
 えるまが【パソサポ】プロジェクトの終了を宣言しようとした。
 すると愛華は…
「みなさん、お待ち下さい。石野橋さんの事は単なるオマケです。私は本気でこの【パソサポ】サービスを展開していく事を考えています。たった二日で止めるつもりは全くございませんの」
「えぇ〜!」×3
 めのる、えるあ、えるまの三人が驚いた。
「よく、言ったわ、お嬢、そうこなくっちゃ」
「むしろ、余計な邪魔が去った今こそ、本格的に動く時よ」
 えるなとえるざが愛華に賛同する。
 潮時と考える、めのる、えるあ、えるまの三人と
 まだまだ、これからと考える、愛華、えるな、えるざの三人…。
 それぞれの力関係から続行が決定された。
 後から、やってきた晋太郎にえるあは救いを求めたが…
「何を言っているんだ、笹川君。これから次のステージに進むんだよ。君たちには一年後に考えている【パソサポ】サービスのテストケースになってもらいたいと考えているんだ。今更、止めますは無いよ」
 との事だった。
 結局、続行票に晋太郎も加わり、数の上でも継続が決まってしまったのだった。


09 結局は二人の問題


 夜も更けて来て、【パソサポ】チームは解散し、明日からの女性版【パソサポ】サービスに備えた。
 夜の10時を回った頃、えるまはめのるに電話した。
「悪いな、めのる…ちょっとハッスルしすぎてるかもな、俺たち」
「ホントだよ、全く…でも、まぁ…悪い気はしてない…ってか、ちょっと嬉しいかも…」
「そうだろ〜」
「調子に乗んな。やり過ぎってのは変わりないんだ」
「悪りぃ、ソーリーな」
「こっちも悪りぃな、俺と笹川の事心配してやってくれたんだよな」
「へへっ、お前ら二人とも奥手過ぎて見てられねぇからよ。ちょっとお節介したくなっちまうんだよな、俺も姉ちゃん達もな」
「でも、まさか、お嬢や生徒会長までその気になるとは思わなかったけどな」
「そうだな、えれぇ金までかけてな」
「だけど、そうじゃ無かったら俺たち今頃、裸踊りしてたかもな」
「あんな約束も満足に守れねぇカス野郎との約束事なんか守る必要無かったけどな」
「ははっ、そうだな」
「でさ、話は変わるけど、明日の事なんだけど…」
「…続けるよ…かなり恥ずかしいけどさ、金かかっているしな。今更、止めますなんて言いにくいよ…」
「ホント、悪りぃ、お前にだけさせちまってさ…」
「良いって…」
「この埋め合わせは…ん?代わる?」
 えるまとの会話中誰かが割り込んで来たようだ。
「どうかしたか、えるま?」
「…私です…」
「え?さ、笹川?」
「はい…」
 割り込んで来たのはえるあだった。
 彼女はえるまの家に泊まりに来ていたのだ。
 もちろん、寝る場所はえるまの部屋ではなく、客間だが…。
 めのると話がしたいと、えるまのスマートフォンを代わってもらい、電話に彼女が出たのだ。
「今日はどうも…」
「こちらこそ…」
「………」
「………」
 さっきまでの気恥ずかしさも手伝って一瞬黙る二人。
 見かねたえるまが助け船を出そうとえるあに近づくが、背後から口を押さえられ二人がかりで部屋を引きずり出されていった。
 引きずっていったのは彼の姉二人、えるなとえるざだった。
「何すんだよ、姉ちゃん達、せっかく俺が…」
「解ってないわね、このバカタレは…」
「そうそう、結局は二人の問題って事なの…」
「余計な茶々入れんじゃないわよ。それより、明日の事、今の内に相談するわよ」
「えぇー今から?」
「そうよ、今からよ。あの二人を盛り立てていっていつかは本当の家族にするのが私達の真の目的なんだから」
「そいつは俺も賛成だけどさ」
「私達は【パソサポ】のサポーター。二人の距離をグッと近づけるのがお仕事なの」
「…ラジャーと言っておくか。しゃーねぇ、俺も一枚かんどくか」
 米澤三姉弟はえるまの部屋にえるあを残し、別の部屋へと引っ込んだ。

 児玉 めのると笹川 えるあ…
ぱそさぽ001話10 かなり奥手な二人だったが、【パソサポ】というちょっと強引なイベントで少しずつ距離が縮まって来ていた。
「あ、明日も晴れると良いな…」
「そうだね、晴れると良いね…」
 今日は良く眠れそうだ…
 二人はそう思うのだった。


登場キャラクター説明


001 児玉 めのる(こだま めのる)

児玉めのる この物語の主人公。
 ヒロインのえるあとはお互い意識し合っているが、なかなか踏み出せないでいるという微妙な間柄。
 親友のえるまと共に強がりから【ぱそさぽ】計画を実行に移す事になる。











002 笹川 えるあ(ささかわ えるあ)

笹川えるあ この物語のヒロイン。
 主人公のめのるとはお互い気になる関係だが、双方奥手でなかなか仲が進展しない。
 めのると従兄弟のえるまのハッタリで計画された【ぱそさぽ】計画に巻き込まれる。
 愛華(あいか)と同様に美人で有名。










003 米澤 えるま(よねざわ えるま)

米澤えるま 主人公、めのるの悪友であり、ヒロインのえるあの従兄弟。
 めのると一緒に行動をしていたが、とあるトラブルが原因で、【ぱそさぽ】計画を立案することになってしまう。
 結構、気も使えるナイスガイ。
 三つ子の姉弟の末っ子。











004 宇佐見 晋太郎(うさみ しんたろう)

宇佐見晋太郎 生徒会長を務める。
 超大金持ちのご子息で、性格も申し分ない。
 文武両道で、非の打ち所がない完璧な少年。
 愛華(あいか)から聞き、【ぱそさぽ】計画に賛同し、スポンサーとなる。











005 倉持 愛華(くらもち あいか)

倉持愛華 晋太郎(しんたろう)と双璧をなす、超大金持ちのご令嬢。
 めのるとえるあのファン。
 【ぱそさぽ】計画に賛同し、力強いスポンサーとなる。
 えるあと共に学校の二大マドンナでもある。












006 石野橋 辰真(いしのはし たつま)

石野橋辰真 めのるとえるまともめた大金持ちの息子。
 晋太郎(しんたろう)や愛華(あいか)の家よりはランクが落ちる家柄でそれがコンプレックスになっている。
 メイドをたくさん引き連れてプライドを守っていたが、その事で、めのる達と口論になり、【ぱそさぽ】計画の発端となる。
 えるあの事が好きで彼女に振られた事でもプライドが傷ついている。
 金こそ全てという可哀相な性格。









007 米澤 えるな(よねざわ えるな)

米澤えるな 三つ子の姉弟の長女でえるまの姉。
 えるあとは従姉妹同士。
 悪ふざけが好きな困った性格。
 めのるの隣の家に住んでいて彼によくちょっかいをかけたりする。
 後から、【ぱそさぽ】計画を聞き、参加する。











008 米澤 えるざ(よねざわ えるざ)

米澤えるざ 三つ子の姉弟の次女でえるまの姉。
 えるあとは従姉妹同士。
 悪ふざけが好きな困った性格。
 めのるの隣の家に住んでいて彼によくちょっかいをかけたりする。
 後から、【ぱそさぽ】計画を聞き、参加する。